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ポップカルチャーから教育者へ ― 自分の挑戦を決意した大学時代の日本との出会い

2025.2.13

高校時代、日本のアニメやゲームが好きな青年だった何龍先生。
大学在学中の日本人留学生との触れ合いから日本への留学、そして教員の道へ進みました。

幼いころからTVで『鉄腕アトム』を視聴していたり、高校時代に日本のアニメや漫画、ゲームがとても流行っていたことがきっかけです。特に『ドラゴンボール』や『ナルト』といった作品は、高校生当時の中国でも大人気で、自然と日本文化に興味を持つようになりました。
そこから日本語を学ぼうと考え、大学は日本語専攻の学部に入学しました。最初はアニメやポップカルチャーが中心でしたが、大学で茶道の体験を通じて、日本の伝統文化にも惹かれるようになりました。

何先生写真1

日本への興味を深めるきっかけとなった茶道体験。中国の大学内に本格的な茶室が設けられ、本格的な体験になったそう。

学部生当時、日本からの留学生や他国の学生との交流会がありました。その際に「地元のことを紹介してほしい」と言われたのですが、地元の天津について詳しく知らない自分に気づきました。自分の住んでいる地域の魅力を外国人にどう伝えるか、それを考える良い機会になりました。
この経験は、今、私が担当している観光案内実践の授業にもつながっています。最近では講義で”中国のペットボトルのお茶ははちみつ入りでとても甘い”といったことを紹介するのが面白いです。地元民にとっては当たり前のことでも、外国人にとっては驚きや新しい発見になることが多いのです。
また中国に来た留学生と話すと、欧米系の学生に比べてシャイでしたが、皆、留学を決意して中国に訪れていました。マナーとかいろいろ心細い思いをするとしたと思うが、自分の体で様々なことを経験したいんだという意欲を感じ、私ももっと学びたい、留学したいという気持ちになりました。

何先生写真2

大学時代に中国へ来た愛知淑徳大学の語学留学生達との記念写真。当時の交流が何先生自身の留学への決断に影響を与えたそう。

日本に留学したことで、日本語教育への関心が深まり、大学院では日本語教育勉強しようと、愛知淑徳大学の大学院に入学しました。その後、院生1年の後期に、母校である天津外国語大学で3カ月間に教壇に立ち、日本語を教える経験をしました。
現地の学生は資格取得に非常に熱心で、第二言語としての日本語への触れ方は、興味関心からというよりかは、実学を身に着けるという考え方が多く、日本とは少し異なることに気づきました。日本の学生は個人の興味本位で第二言語を選ぶことが多いのですが、学びを進めるうちに就職など実用的な目的へと変わっていくのが特徴です。
また、中国の大学では、知識を詰め込む教育が中心で、理論やデータを深く学ぶことが重視されていました。一方で、日本の大学院では「考える力」や「自分の意見を持つこと」が求められると感じました。特にディスカッションや発表の機会が多く、論理的に考え、自分の考えを他者に伝えるスキルが鍛えられました。また、日本では先生との距離が近く、研究のアドバイスを受けやすい環境が整っていたことも印象的でしたね。

何先生写真3

大学時代の友人達との記念写真。皆同じ寮に住んでいた同級生で様々な地域から集まっているため、生活スタイルも全然違ったそう。その違いを乗り越えたからこそ絆が生まれ、今でも連絡をしたり会ったりしているそう。

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Q.日本語を学ぼうと思ったきっかけは何でしたか?
幼いころからTVで『鉄腕アトム』を視聴していたり、高校時代に日本のアニメや漫画、ゲームがとても流行っていたことがきっかけです。特に『ドラゴンボール』や『ナルト』といった作品は、高校生当時の中国でも大人気で、自然と日本文化に興味を持つようになりました。
そこから日本語を学ぼうと考え、大学は日本語専攻の学部に入学しました。最初はアニメやポップカルチャーが中心でしたが、大学で茶道の体験を通じて、日本の伝統文化にも惹かれるようになりました。
何先生写真1

日本への興味を深めるきっかけとなった茶道体験。中国の大学内に本格的な茶室が設けられ、本格的な体験になったそう。

Q.茶道の体験が日本への興味を深めるきっかけになったのですね。具体的にどのような経験だったのでしょうか?
大学時代、天津外国語大学で日本語を専攻していた際、裏千家の先生を招いた茶道体験がありました。初めてお茶を飲んだ時は、正直「苦い!」と思いましたし、お茶菓子は甘すぎて驚きました(笑)。しかし、先生が「なぜお茶が苦いのか」「なぜお菓子が甘いのか」という意味を丁寧に教えてくださり、徐々にその文化に興味を持つようになりました。
茶道の作法から来る礼儀正しさは、長い歴史からできていることだろうと感じましたし、日本人のマナーの良さもこういうところからなんだろうと感じた。この経験から、もっと本場の日本文化に触れたいと強く思うようになりました。
Q.大学での留学生との交流も大きな影響があったそうですが、どのようなことを感じましたか?
学部生当時、日本からの留学生や他国の学生との交流会がありました。その際に「地元のことを紹介してほしい」と言われたのですが、地元の天津について詳しく知らない自分に気づきました。自分の住んでいる地域の魅力を外国人にどう伝えるか、それを考える良い機会になりました。
この経験は、今、私が担当している観光案内実践の授業にもつながっています。最近では講義で”中国のペットボトルのお茶ははちみつ入りでとても甘い”といったことを紹介するのが面白いです。地元民にとっては当たり前のことでも、外国人にとっては驚きや新しい発見になることが多いのです。
また中国に来た留学生と話すと、欧米系の学生に比べてシャイでしたが、皆、留学を決意して中国に訪れていました。マナーとかいろいろ心細い思いをするとしたと思うが、自分の体で様々なことを経験したいんだという意欲を感じ、私ももっと学びたい、留学したいという気持ちになりました。

何先生写真2

大学時代に中国へ来た愛知淑徳大学の語学留学生達との記念写真。当時の交流が何先生自身の留学への決断に影響を与えたそう。

Q.留学で初めて日本に来た時、驚いたことやカルチャーギャップはありましたか?
2010年に交換留学で来日し、千葉に滞在していたのですが、最初に驚いたのは東日本大震災の時でした。地震が起きた時、日本人は落ち着いて秩序を守り、パニックにならず情報収集をしていたのが印象的でした。中国では地震=壊滅的なイメージが強かったので、その冷静さに驚き、日本人のマナーやコミュニティの力を実感しました。

Q.留学経験が日本語教育の道につながったのですね。中国と日本とで学び方の違いなどはありましたか?
日本に留学したことで、日本語教育への関心が深まり、大学院では日本語教育勉強しようと、愛知淑徳大学の大学院に入学しました。その後、院生1年の後期に、母校である天津外国語大学で3カ月間に教壇に立ち、日本語を教える経験をしました。
現地の学生は資格取得に非常に熱心で、第二言語としての日本語への触れ方は、興味関心からというよりかは、実学を身に着けるという考え方が多く、日本とは少し異なることに気づきました。日本の学生は個人の興味本位で第二言語を選ぶことが多いのですが、学びを進めるうちに就職など実用的な目的へと変わっていくのが特徴です。
また、中国の大学では、知識を詰め込む教育が中心で、理論やデータを深く学ぶことが重視されていました。一方で、日本の大学院では「考える力」や「自分の意見を持つこと」が求められると感じました。特にディスカッションや発表の機会が多く、論理的に考え、自分の考えを他者に伝えるスキルが鍛えられました。また、日本では先生との距離が近く、研究のアドバイスを受けやすい環境が整っていたことも印象的でしたね。

何先生写真3

大学時代の友人達との記念写真。皆同じ寮に住んでいた同級生で様々な地域から集まっているため、生活スタイルも全然違ったそう。その違いを乗り越えたからこそ絆が生まれ、今でも連絡をしたり会ったりしているそう。

Q.先生ご自身も第二言語として日本語を学ばれましたが、どのような苦労がありましたか?
一番の苦労は英語の影響です。中国では小学校4年生から英語教育が始まるので、英語がベースになってしまい、第二言語として日本語を学ぶ時に混乱しました。しかし、バランスよく言語を学ぶために、私は英語の資格を早めに取得し、忘れないよう工夫しました。外国語は使わないとすぐに忘れてしまうので、その点も苦労の一つでしたね。
Q.教育者としてのやりがいや、今取り組んでいる研究について教えてください。
私が担当する授業は実践的な内容が中心です。例えば、AIを活用した言語教育の研究に取り組んでいます。AIはこれからの時代に欠かせないツールですが、教育者の役割が完全に失われるわけではありません。AIを活用しながらも、教師がサポートし、学生が楽しく、確実に語学力を向上させることが重要です。学生たちが学びを通じて成長し、達成感を感じる姿を見ることが、私のやりがいです。

Q.これから第二言語を学ぼうとする学生へのメッセージをお願いします。
言語を学ぶことは、自分の視野を広げる大きなチャンスです。最初は間違えることを恐れず、積極的に話してみてください。文法が完璧でなくても大丈夫です。留学や異文化交流の機会があれば、自分の知らない世界に飛び込んでみることをおすすめします。その経験が、自分自身の成長につながるはずです。

自身が留学生を受け入れるという経験から、自身も異国の地で学びを得た何先生。
自分自身が第二言語として日本語を学んだ経験を活かし、学生に中国語を教えています。

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