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アメリカ留学から言語学へ:異文化交流が拓いた研究者の道

2024.12.10

大学卒業後、母国の韓国国内で一般企業に勤めていた柳先生。
大学時代のアメリカ留学での経験が、その後の研究者としての人生に大きな影響を与えました。

柳先生写真1

英語の勉強をしに1年間渡米した柳先生。その際にこれまで勉強してきた英語と現地の英語の違いを感じたそうです。

学生時代のアメリカ留学で日本人、モンゴル人、中国人といった異なる背景を持つ友人たちと接する中で、言語や文化の違いに興味を持つようになりました。
特に現地で仲良くなった日本人の”ナオ”さんとは色々な話をし、お互いの国の言葉がわからないので、英語で韓国と日本の文化について教えあいました。ナオさんは部活動でフェンシングをやっていて、部活動という文化が無い韓国人から見ると、なんでオリンピックとかにも出ないのに勉強以外の事に打ち込むのかとても不思議に感じました。
このような、現地で多国籍な仲間たちとともに学び、文化や言語の多様性に触れた経験が、今現在の言語学に対する興味の原点になっています。

柳先生写真2

2014年学会の写真 第一言語習得の研究発表を行い、自分の研究が認められることにやりがいを感じたそうです。

アメリカ留学をきっかけに言語への興味が芽生え、第一言語習得(母語を学ぶプロセス)や第二言語習得(外国語を学ぶプロセス)の研究を行いました。院生時代には海外の学会にも参加し、修士2年生の時には、国際学会でBest Student Awardを受賞することも出来ました。この賞は大学院生でいい論文を書き発表した研究者に与えられ、この賞を受けてもっと研究を頑張ろうと思いました。
また自分の研究成果が見られ、評価されることが嬉しく、日本人が第二言語として韓国語を学ぶときにどのように習得したかを調査した論文は”Language Learning”という言語学でトップ5にも入るジャーナル紙にも掲載され、とても嬉しかったです。

柳先生写真3

第一言語習得の研究では、写真のように映像を撮影しその音声データを文字起こしすることでデータを蓄積していったそうです。

インタビューを読む

柳先生写真1

英語の勉強をしに1年間渡米した柳先生。その際にこれまで勉強してきた英語と現地の英語の違いを感じたそうです。

Q.アメリカ留学で現地の英語とのギャップを感じたそうですが、どのように感じたのですか?
大学3年生の時に1年間アメリカの大学へ留学しました。留学の目的は、就職のためにTOEICの点数を上げようと考え、英語の勉強をしようと思い行きました。元々英語は大学で学んでおり、また韓国では高校・大学ともにレベルの高い学校に通っていました。しかしながら韓国の大学では、英語のテストや論文対策が中心で、会話力を磨く機会がありませんでした。実際にアメリカに行くと、自分がこれまで勉強してきた英語が全く通じないことを思い知らされました。スピーキングや作文テストでは自分の思い通りに言葉を紡げず、ショックを受けたことを今でも覚えています。
Q.1年間の留学ではどのような生活を送られてたのですか?
初めて異文化の違いを肌で感じました。日本人、モンゴル人、中国人といった異なる背景を持つ友人たちと接する中で、言語や文化の違いに興味を持つようになりました。
特に現地で仲良くなった日本人の”ナオ”さんとは色々な話をし、お互いの国の言葉がわからないので、英語で韓国と日本の文化について教えあってました。ナオさんは部活動でフェンシングをやっていて、部活動という文化が無い韓国人から見ると、なんでオリンピックとかにも出ないのに勉強以外の事に打ち込むのかとても不思議に感じました。
このような、現地で多国籍な仲間たちとともに学び、文化や言語の多様性に触れた経験が、今現在の言語学に対する興味の原点になっています。
Q.帰国し大学を卒業した後は一般企業に就職されたそうですが、どうして研究者になろうと思われたんですか?
帰国後大学を卒業し、韓国の大手企業に就職しました。企業では5年間、マーケティング職をして、新商品の開発から販売戦略の立案まで幅広い業務を担当しました。研究所のスタッフと新商品の味やレシピについて議論する中で、人間関係の重要性を学びました。時にはぶつかることもありましたが、その経験が今の研究活動にも生きています。
働いているうちに新たな挑戦がしたいという思いを抱くようになり、留学を決意しました。奨学金プログラムに応募し、合格したので、2005年に大学院で勉強するために日本へ来ました。

柳先生写真1

2014年学会の写真 第一言語習得の研究発表を行い、自分の研究が認められることにやりがいを感じたそうです。

Q.大学院では何の研究を行ったのですか?
アメリカ留学を通して全然喋れなかった英語が喋れるようになった経験をきっかけに、言語への興味が芽生え、第一言語習得(母語を学ぶプロセス)や第二言語習得(外国語を学ぶプロセス)の研究を行いました。
院生時代には海外の学会にも参加し、修士2年生の時には、国際学会でBest Student Awardを受賞することも出来ました。この賞は大学院生でいい論文を書き発表した研究者に与えられ、この賞を受けてもっと研究を頑張ろうと思いました。
また自分の研究成果が見られ、評価されることが嬉しく、日本人が第二言語として韓国語を学ぶときにどのように習得したかを調査した論文は”Language Learning”という言語学でトップ5にも入るジャーナル紙にも掲載され、とても嬉しかったです。

Q.言語習得の研究は、どのような手段を用いて行うのですか?
私は韓国人が自分の母語をどのように習得していくかを研究しています。私自身の子どもを含めた、3人の韓国の子どもたちに1歳半から3歳半までの2年間、1カ月に1回、1時間程度の録音を行い、その発話を文字起こしして分析するという気の遠くなるような作業を行いました。データを収集し、文字化してコーパス(言語データの集積)を構築するのは録画も文字起こしもものすごく大変でした。
1分の動画を文字起こしするにしても10倍以上の時間がかかります。今はYouTubeでも自動で文字起こししてくれますが、私がこの研究を行っていた20年くらい前にはなかったので、ひたすら手作業で文字起こししました。
ですがその工程を行ったことで、もっと言語学に興味を持つようになり、自分の言語学に対する洞察力も深くなりました。

Q.まだ正確な発音が出来ない子どもの会話を文字起こしするのはとても大変だと思いますが、なぜ2年間も続けられたのですか?
まず単純に発話データを分析するのが面白いからです。それと、発話データの蓄積が1人分貯めるのにも、ものすごく時間がかかります。それをオープンプラットフォーム(CHILDES https://childes.talkbank.org/)に公開することで、第一言語習得研究に興味を持った人が敷居を低くやれる環境を作りたいという想いもありました。特に韓国語については年齢を跨ぐ縦断的なデータが無かったため、私がやらなければという使命感と、学問の基盤を築くことにたいするやりがいがこの研究にはありました。
この研究で私は博士論文が書け、博士号を2012年に取得しました。

柳先生写真3

第一言語習得の研究では、写真のように映像を撮影しその音声データを文字起こしすることでデータを蓄積していったそうです。

Q.大学院卒業後のキャリアについて教えてください。
2012年に博士号を取得後、日本に残り、非常勤講師として韓国語を教えながら研究を続けました。日本での研究環境は非常に充実しており、科学研究費を3回受け取るなど、多くの支援をいただきました。
現在は准教授として研究と教育を両立しながら、言語学の発展に貢献できるよう努めています。

Q.学生たちへのメッセージをお願いします。
学生時代には失敗を恐れず、さまざまな経験をしてほしいと思います。特に人間関係を築く力は社会に出てから非常に重要です。心のコントロールやコミュニケーションスキルを養うために、アルバイトや課外活動などを通じて多くの人と接してみてください。それが未来のキャリアを支える基盤になるはずです。

アメリカ留学をきっかけに言語学に興味を持った柳先生。
異文化交流や研究で培った経験を活かし、現在は准教授として教育と研究に取り組み、学生たちにその魅力を伝えています。

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